霊柩車と寝台車の違いって?

故人の柩を火葬場などに運ぶ霊柩自動車として伝統的な「宮型」のタイプが、最近はあまり使われなくなっている事情について前回記しました。代わって主流となっているのが「洋型」や「バン型」ですが、車体色ーも従来のような喪のイメージカラーとも言える黒だけではなく、紺などのブルー系やパールホワイトと呼ばれる光沢のある白色の霊柩自動車も増えてきました。

こうなると、特に「バン型」の霊柩自動車などは、一見しただけではややグレードの高いワンボックスカーと見分けがつきませんから、そこがまた、簡素・シンプルな葬儀を望む喪家のニーズにも合っているのでしょうか。

ただ一般には、霊柩自動車は前ドアの下部に比較的小さい文字ですが、〈霊柩〉または〈霊柩限定〉と表記しているのが通例です。と言うのも霊柩自動車は、法令で霊柩輸送に目的を特定した特種用途車両(いわゆる「8ナンバー車」)として、用途に適った改造が認められているからです。

それ以前に、そもそも霊柩自動車を営業運行するには国の許可を受ける必要があるということ、ご存知でしょうか?

法令では遺体は「貨物」に区分されていて、霊柩自動車の営業運行は「貨物自動車運送事業法」に基づく「一般貨物自動車運送事業(霊柩限定)」の許可を国土交通大臣から受けている事業者でなければできません。ナンバープレートも、旅客運送事業のタクシーやバスなどと同じように事業用自動車を示す緑色に限られています。
つまり、たとえば葬儀社であっても、霊柩限定の運送事業免許を持たずに白ナンバーの車で柩を有償搬送することは違法行為で、認められていないのです。

なお、霊柩運送では料金についても事業許可の審査対象になっているため、同一地域内で事業者によって大きな差があるということは、まずありません。(霊柩運送料金の仕組みについてはこちらをご参照下さい。)

ところで、よく「バン型」の霊柩自動車と混同されるのが「寝台車(寝台自動車)」です。こちらは葬儀の時ではなく、主に葬儀前の、病院などからの遺体の搬送などに用いられます。
寝台自動車も霊柩自動車と同様に特定用途改造した8ナンバー車ですが、大きな違いは、運転席・助手席以外の後部車内が可動レールなどを備えた柩の積載を専らとする造りではなく、出し入れ可能なストレッチャーを備え、その隣に遺族の方が添乗できるシートがあることでしょうか。

首都圏の場合、ほとんどの葬儀社ではこうしたご遺体搬送を目的にした寝台自動車を自社で持ち、いざという時に駆けつけられるようにしていますが、斎場から火葬場へ柩を運ぶ霊柩自動車では、それを専業とする実績のある事業者もあるので、そちらから配車するケースが多いようです。

なお、寝台自動車には病気の患者や寝たきりの方を運ぶことを目的とするものもありますが、ご遺体搬送を目的とする寝台自動車は、法的には霊柩運送の一部とされ、霊柩自動車同様に営業目的で運行するには緑ナンバーで、「貨物自動車運送事業法」に基づく許可が必要です。(ちなみに、患者搬送などの寝台自動車は「旅客自動車事業法」の対象となります。)

白ナンバーの寝台自動車でご遺体搬送をすること自体は問題ありませんが、白ナンバーの車で違法・無許可の霊柩運送・遺体搬送をし、費用を請求しているような場合は、営業目的の搬送となり違法となります。また、そうした葬儀社も少なからずあると耳にします。

柩の搬送には「埋火葬許可証」、病院などからの遺体の搬送には「死亡診断書の携行」が法律で求めらています。このため、霊柩自動車あるいは寝台自動車には、対応する証明書類を持った葬儀社スタッフが同乗するのが一般的です。

なお、白ナンバーの自家用自動車であっても、喪家・遺族の方が自分の所有車などで自ら運転して柩あるいは遺体を搬送することは、「埋火葬許可書」「死亡診断書」を携行している限り、基本的に法に触れたり、罪に問われることはありません。ただし、民間火葬場では、葬儀社以外の一般個人の予約を受け付けていませんので、個人での予約が可能かどうか、ストレッチャーの使用が可能かどうか調べておかれたほうがよいと思います。
(*「柩」は遺体が納まっている棺を意味します。)